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GLに基づく治療法模範解答

アトピー性皮膚炎

設問1

[症例]

atopi_boy

 

8歳の男児。生後6か月より乳児湿疹があり、その後アトピー性皮虜炎と診断されました。受診時、四肢の関節屈側部に中等度の苔癬化と全身の皮膚の乾燥を認め、浅い掻破痕が体幹に散在していました。食物による皮膚症状の悪化は自覚していません。血中総IgEは850IU/mlで、 特異的IgE抗体(CAP RAST)クラスは、スギ花粉3、ハウスダスト4、コナヒョウヒダニ3、大豆2、牛乳1、鶏卵0でした。

この患者に対する生活指導および治療として、先生が施行されるものを下記からお選び下さい。
(複数回答可)

[模範解答例]

選択肢のうちを実施(■は非実施)

  • 【スキンケア】
  • ■ 入浴時の石鹸使用は皮膚を悪化させるので禁止する
  • 入浴後に保湿剤によるスキンケアを行う
  • ■ 掻破痕が多い部位には入浴後に消毒剤の塗布を行う
  • 【食事】
  • ■ 大豆の摂取を制限する
  • ■ 牛乳の摂取を制限する
  • ■ 鶏卵の摂取を制限する
  • 【外用】
  • 保湿・保護を目的とした外用薬(亜鉛華軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、白色ワセリンなど)を適宜使用する
  • ■ 四肢の苔癬化にはステロイド軟膏(マイルド)を使用する
  • 四肢の苔癬化にはステロイド軟膏(ストロング〜ベリーストロング)を使用する
  • ■ 四肢の苔癬化にはステロイド軟膏(ストロンゲスト)を使用する
  • ■ 四肢の苔癬化には小児用タクロリムス軟膏を使用する
  • 【外用方法】
  • ■ ステロイド薬はできるだけ薄くのばして塗るよう指導する
  • ■ 苔癬化が紅斑となった時点でステロイド軟膏やタクロリムス軟膏は中止する
  • 紅斑がほぼ消褪した時点でステロイド軟膏やタクロリムス軟膏は中止または漸減後中止する
  • ■ 何も塗布しない
  • 【内服】
  • ■ 経口ステロイド薬を投与する
  • ■ クロモグリク酸ナトリウムを投与する
  • 抗ヒスタミン薬を投与する
  • ■ 漢方薬を投与する
  • ■ その他
     [              ]

[解説]

  • 【スキンケア】
  •  アトピー性皮膚炎ガイドライン2012第7章アトピー性皮膚炎のスキンケアをご参照ください。石けんの使用については、p.57に記されておりますが、皮膚症状を悪化させると考えられておらず、よって石けんの使用を禁止する措置は標準ではありません。また、同ページには、通常は薬物による抗菌的処置は要しないと書かれており、消毒剤の塗布についても推奨しておりませんので、この症例でも消毒剤の塗布は不必要と考えられます。
  • 【食事】
  •  ガイドライン第5章アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子の検索と対策をご参照ください。p.43の通り、乳児アトピー性皮膚炎は乳児期の食物アレルギーに伴って発症することがあり、アレルゲン食品の除去により湿疹が改善することがしばしばあります。しかし、この症例では、食物による皮膚症状の悪化は自覚していないことから、大豆や牛乳や鶏卵といった食物がアトピー性皮膚炎の悪化因子になっている可能性は低く、血液検査でCAP RASTが陽性という結果だけでは、食物摂取を制限する必要はありません
  • 【外用】
  •  ガイドライン第7章アトピー性皮膚炎のスキンケアをご参照ください。p.56の説明通り、皮膚の保湿・保護を目的として亜鉛華軟膏やヘパリン類似物質含有軟膏や白色ワセリンを適宜塗布することが推奨されています。また、ステロイド外用剤の使用に関しては、ガイドライン第8章アトピー性皮膚炎の薬物療法をご参照ください。P.64 図8-3に示されている通り皮膚症状の程度に応じて適切なランクのステロイド外用薬が示されています。また、p.65図8-4が示す通り皮疹としての重症度を考えた選択を行います。よって、四肢の苔癬化を伴うような湿疹に対しては、マイルドクラスではなくストロングからベリーストロングクラスのステロイド外用剤が第一選択と考えられます。また、p.64 図8-3の通り、小児用として使用できるタクロリムス軟膏(0.03%)についてはステロイドの使用が適切でない部位での使用とされています。
  • 【外用方法】
  •  外用量については、p.65からステロイド外用剤の投与方法について説明しています。p.66 図8-6に示す通りfinger-tip unit(FTU)という外用量の目安を提唱しています。したがって、適切な使用量で外用剤を使用することが推奨されており、ステロイド外用剤をできるだけ薄くのばして塗るよう指導することは望ましくありません。また、ステロイド外用剤の中止のタイミングについては、症状の改善度を評価しながらステロイド外用剤を漸減し、1日1回から隔日投与のステロイド外用剤の投与で症状の再燃がないことを確認してからがよいと推奨していますので、苔癬化が紅斑となった時点でステロイド軟膏やタクロリムス軟膏は中止するのは適切ではありません
  • 【内服】
  •  ガイドライン第8章アトピー性皮膚炎の薬物療法をご参照ください。p.61に説明があるとおり、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服は外用療法と併用して、またその補助として用いられます。しかし、p.75では、抗ヒスタミン薬の有効性のエビデンスについては不十分とする報告もある一方、大規模臨床試験で有用性が証明されたという報告もあり、今後さまざまな薬剤に対する有用性の検討が期待されているところであるとされています。よって、本症例では、まずはスキンケアおよび外用剤塗布で治療を開始し、必要と判断すれば抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用し、必ずしもこれらの薬剤を併用する必要があるわけではないと考えられます。経口ステロイド薬についても、p.77で示されている通り慢性疾患であるアトピー性皮膚炎に対して漫然と長期使用することは避けるべきであり、特に、小児においては副作用を考慮して使用が一般的には推奨されません。漢方薬については、第9章アトピー性皮膚炎の基本治療以外の付加的治療に記載されていますが、通常の基本治療で症状のコントロールができない場合に漢方薬の併用を試みることと記されています。

設問2

[症例]

atopi_woman

24歳の女性。事務職。幼児期にアトピー性皮膚炎と診断されましたが、思春期に軽快し、以後皮膚の乾燥にたいして保湿剤のみを使用していました。23歳で就職した後しだいに悪化し、受診時には顔面全体の乾燥と紅斑および体幹・四肢の強いかゆみを伴う落屑性紅斑と四肢に掻破による苔癬化がみられました。血中総IgEは5200IU/mlで、 特異的IgE抗体 (CAP RAST)クラスはスギ花粉5、コナヒョウヒダニ6、カンジダ3、TARCは1250pg/mLでした。花粉症に対して抗アレルギー薬を服用しています。

この患者に対する初診時の治療として、先生が処方されるものを下記からお選び下さい。
(複数回答可)

[模範解答例]

選択肢のうちを実施(■は非実施)
  • 【外用】
  • 保湿・保護を目的とした外用薬(亜鉛華軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、白色ワセリンなど)
  • 顔面にステロイド軟膏(マイルド)
  • ■ 顔面にステロイド軟膏(ストロング)
  • ■ 顔面にステロイド軟膏(ベリーストロング〜ストロンゲスト)
  • ■ 顔面にタクロリムス軟膏
  • ■ 体幹・四肢にステロイド軟膏(マイルド)
  • 体幹・四肢にステロイド軟膏(ストロング〜ベリーストロング)
  • ■ 体幹・四肢にステロイド軟膏(ストロンゲスト)
  • ■ 体幹・四肢にタクロリムス軟膏
  • ■ 何も塗布しない
  • 【内服】
  • ■ シクロスポリン内服
  • ■ ステロイド内服
  • 抗菌薬内服
  • ■ 漢方薬
  • ■ 抗うつ薬
  • ■ 乳酸菌製剤
  • ■ その他
     [              ]

[解説]

  • 【外用】
  •  前述の8歳のアトピー性皮膚炎の症例と同様に、外用剤の選択については、アトピー性皮膚炎ガイドライン2012第7章アトピー性皮膚炎のスキンケアをご参照ください。p.56の説明通り、皮膚の保湿・保護を目的として亜鉛華軟膏やヘパリン類似物質含有軟膏や白色ワセリンを適宜塗布することが推奨されています。また、ステロイド外用剤の使用に関しては、ガイドライン第8章アトピー性皮膚炎の薬物療法をご参照ください。P.64 図8-3に示されている通り皮膚症状の程度に応じて適切なランクのステロイド外用薬が規定されています。また、p.65の図8-4が示す通り皮疹としての重症度を考えた選択を行います。さらに、p.68の図8-7が示す通り部位によりステロイド外用薬の吸収率が異なることを考慮すると、顔にはマイルドクラス、体幹にはストロング〜ベリーストロングクラスのステロイド外用薬が適切であると考えられます。
  • 【内服】
  •  ガイドライン第8章 アトピー性皮膚炎の薬物療法をご参照ください。シクロスポリン内服については、p.77の記載通りアトピー性皮膚炎に対して保険適応になっています。しかし、治療に適応のある対象者は、既存の治療に抵抗性のある16歳以上の患者であり、初診時の治療薬としては推奨されません。経口ステロイド薬についても、p.77の記載通り副作用を考慮して使用が一般的には推奨されません。漢方薬については、第9章アトピー性皮膚炎の基本治療以外の付加的治療に記載されていますが、通常の基本治療で症状のコントロールができない場合に併用を試みることと記されています。p.88の記載にある通り抗菌薬内服については、皮膚感染症を合併する場合に病変部が広範囲に拡大していく傾向があれば抗菌薬の全身投与を行うとされており、この症例では感染症の合併はないため治療薬として選択する必要はないと考えられます。アトピー性皮膚炎は慢性疾患であるため、その他の慢性疾患と同様に精神科疾患の合併率が高くなります。よって、うつ病などが疑われる場合は、精神科の受診を促し連携する必要がありますが、この症例では抗うつ薬が必要と思われる症状は認められていないため処方する必要はないと考えられます。乳酸菌製剤については、第9章アトピー性皮膚炎の基本治療以外の付加的治療に記載されていますが、通常の基本治療で症状のコントロールができない場合に併用を試みることと記されていますので、初期治療として始めるにはふさわしくないと考えられます。

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