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GLに基づく治療法模範解答

気管支喘息(小児)

設問1

[症例]

 eczema_boy

3歳、男児。生後10か月頃より感冒罹患時に軽度喘鳴が出現、2歳早々に気管支喘息の軽症持続型と診断され、以後、ロイコトリエン受容体拮抗薬を毎日服用していました。最近3か月は週に1~2回夜間と早朝に咳嗽と喘鳴があり、昨夜は救急外来を受診してβ2刺激薬の吸入治療を受けたとのことで、本日午前中の外来を受診されました。これまでに気管支喘息発作で入院した既往はなく、本日受診時の胸部ラ音は聴取しませんでした。

この患者に対する今後の長期管理薬として、先生が本日処方を検討されるものを下記からお選び下さい。
(複数回答可)

[模範解答例]

選択肢のうちを実施(■は非実施)

  • ■ 現状維持
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬
  • 吸入ステロイド薬
  • ■ DSCG(クロモグリク酸ナトリウム)吸入
  • ■ テオフィリン徐放製剤
  • ■ 長時間作用型β2刺激薬(貼付)
  • ■ 長時間作用型β2刺激薬(吸入)
  • ■ 吸入ステロイド薬と長時間使用方β2刺激薬の吸入合剤
  • ■ 経口ステロイド薬
  • ■ 抗ヒスタミン薬(第2世代抗アレルギー薬)
  • ■ IPD(アイピーディ® )または スプラタストトシル酸塩
  • ■ 去痰薬
  • ■ 漢方薬
  • ■ 鍼灸
  • ■ ビタミン剤
  • ■ その他
     [              ]

[解説]

  • 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012第7章長期管理に関する薬物療法を参照してください。p.127 表7-5が示すようにこの症例はロイコトリエン受容体拮抗薬で加療を行っていることから治療ステップ2であることがわかります。また、p.23 表2-6より現在の治療ステップを考慮した気管支喘息の重症度を判断すると、喘鳴が週に1回以上の咳嗽や喘鳴が出現しているため、見かけ上の重症度は中等症持続型であり、真の重症度は重症持続型と判断できます。P.128に説明してある通り、治療ステップ4は真の重症度が重症持続型の場合に対応する治療であることから、高容量の吸入ステロイド薬を中心にロイコトリエン受容体拮抗薬や長時間作用型β刺激薬やテオフィリン徐放製剤を併用すると記されています。したがって、この症例においてはまずは今まで服用していたロイコトリエン受容体拮抗薬に加え、吸入ステロイド薬を追加処方し、その後の経過によってコントローラーの調整を行うのがよいのではないかと考えられます。p.116にあるロイコトリエン受容体拮抗薬について示されている通り、従来の経口抗アレルギー薬より効果があるという報告やテオフィリン徐放製剤よりもピークフロー値の有意な改善を認めたという報告もあり、また、ロイコトリエン受容体拮抗薬はテオフィリン徐放製剤と比べても安全性も高いことがわかります。さらに、P.119以降で記載されている長時間作用型β刺激薬については、安全性の面からも症状がコントロールされたら中止することを原則とするとしています。

設問2

[症例]

eczema_girl

10歳女児。2歳時より気管支喘息と診断し先生にフォローされていました。この半年間は吸入ステロイドとしてフルタイド100μgを1日1回服薬し、明らかな発作はありませんでした。しかし、先週から持久走の練習中に喘鳴が出現するようになりました。走らなければ発作は出ないので、先生に診断書を書いてもらい持久走の授業を休みたいとのことで受診されました。

今後の治療について、先生ならどのようなご指導をされますか。
(複数回答可)

[模範解答例]

選択肢のうちを実施(■は非実施)
  • 【生活指導・治療方針】
  • ■ 薬は追加増量しないで診断書を書いて持久走の授業を休めるようにしてあげる
  • ■ 診断書を書いて授業を休めるようにしてあげるが治療薬を増量または変更する
  • 今日は診断書を書かずに、まずは治療法を変更する
  • 走る前にウォーミングアップをするように指導する
  • 持久走の前にβ2刺激薬を服薬(吸入または内服)するよう指導する
  • 【治療の詳細】
  • 吸入ステロイドを増量する
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬を追加する
  • ■ テオフィリン製剤を追加する
  • ■ 長期間作用性β2刺激薬の吸入を追加する
  • ■ 長期間作用性β2刺激薬の貼付薬を追加する
  • ■ 吸入ステロイド薬と長期間作用性β2刺激薬の吸入合剤に切り替える
  • ■ DSCG(クロモグリク酸ナトリウム)吸入を追加する
  • ■ 第2世代抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)を追加する
  • ■ IPD(アイピーディ®) または スプラタストトシル酸塩を追加する
  • ■ 漢方薬を追加する
  • ■ ビタミン薬を追加する
  • ■ その他
     [              ]

[解説]

  • 【生活指導・治療方針】
  •  小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012 第13章 運動誘発喘息(EIA)、運動療法をご参照ください。p.223の表13-1にEIAの予防に効果的な対応について記載がまとめてあります。また、p.223〜224に運動療法についても説明しています。EIAを起こす子どもたちに運動制限をするのではなく、EIAへの対応に注意を払いながら、積極的に運動をさせるようにすることが必要です。EIAを起こさないために、運動開始前の準備運動を十分に行う事が大切であり、β刺激薬などの薬剤を使用してから運動を始めることも推奨されます。
    次に、小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 第13章 運動誘発喘息(EIA)、運動療法をご参照ください。p.222の記載より強いEIAを引き起こす症例は気道過敏性の亢進を認めるため、日常生活においても運動時以外でも発作を起こしやすいと考えられます。また、喘息のコントロールがよければEIAが軽減されますが、コントロールが不良であればEIAが増悪します。よって、この症例はフルタイド100μgを1日1回服薬でコントロールできていないため、長期管理薬の設定が適切であるかどうか判断する必要があります。
  • 【治療の詳細】
  •  p.23 表2-6より重症度の判断をすると、この症例は、持久走での症状が出る前は、見かけ上の重症度は間欠型で、フルタイド低容量の吸入をしていたので治療ステップ2(p.126 表7-4)の治療を行っていたことになります。したがって、治療ステップを考慮した真の重症度は軽症持続型であったことがわかります。しかし、持久走による喘鳴が出現していることから、見かけの上の重症度は中等症持続型であり、治療薬は治療ステップ2であるため、真の重症度が重症持続型であると判断できます。そして、治療ステップ2でコントロール不良(p.124 表7-6参照)であるため、治療のステップアップが必要であると判断します。次に、小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 第7章 長期管理に関する薬物療法をご参照ください。p.125以降にある各治療ステップにおける薬物療法の進め方に従うと、p.128にある治療ステップ4が真の重症度が重症持続型の場合に対応する治療であり、前の症例で解説のある通り高容量の吸入ステロイド薬を中心にトイコトリエン拮抗薬(その他小児喘息に適応のある経口抗アレルギー薬を含む)やテオフィリン徐放薬や長時間作用型β刺激薬の併用が基本治療となります。p.116にあるロイコトリエン受容体拮抗薬の記載をみると、従来の経口抗アレルギー薬より効果があるという報告やテオフィリン徐放薬よりもピークフロー値の有意な改善を認めたという報告もあり、また、ロイコトリエン受容体拮抗薬はテオフィリン徐放薬と比べても安全性も高いことがわかります。さらに、P.119以降で記載されている長時間作用型β刺激薬については、安全性の面からも通常症状がコントロールされたら中止することを原則とするとしています。なお、以前にはよく使用されていたDSCG(クロモグリク酸ナトリウム)吸入については、コクランレビューにおいてもエビデンスが不十分という評価になっています。
    つまり、この症例に関しては、吸入ステロイドを増量しロイコトリエン受容体拮抗薬を処方することに加え、運動前にβ2刺激薬を使用することやウォーミングアップをするよう指導することでよいのではないかと考えます。

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